研究のアウトライン


■研究の背景

 「間(ま)」は主観的な領域に属し,それはひとり一人に異なった経験として立ち現れてきます.私の感じる“5秒”とあなたの感じる“5秒”が一致している保証はどこにも無いのです.そしてコミュニケーションにおいて主観的領域がどのようにインターパーソナルに共有されるのかという問題は未解決のまま残されています.共創システムはこのような内側から捉えたコミュニケーションの本質を明らかにします.
 われわれは,個において認知される明在的領域だけでなく,身体を介してインターパーソナルに共鳴する潜在的領域にも注目し,それらの自己言及を介して主観的時間の生成と共有が可能になることを示唆してきました.さらに,対話コミュニケーションやリハビリテーションを「間」の共創の観点から分析しモデル化しています.そして社会的コミュニカビリティーを高める共創支援システムの確立に取り組んでいます.

■研究テーマ

 われわれはコミュニケーションにおける主観的時間(「間」)の共創に関する認知神経科学やコミュニケーション科学,その応用としてのインタフェースの構築やコミュニケーション支援に取り組んでいます.さらに,社会的コミュニケーションにおける「間」の計測と,それに基づく共創の場のデザインの研究を進めています.これらの活動は,以下のように共創の基礎的研究,表現的研究,そして実践的研究の3つに分類することができます.

1.基礎的研究: コミュニケーション科学と認知神経科学

 社会的ネットワークにおける共創場の可視化
   組織における人間行動のビッグデータから「間」の共有プロセスを評価して場の可視化をめざします.

 内的観測に基づく共創コミュニケーションモデルの構築
   内的観測過程をオペレーターとして扱うことで共創コミュニケーションの数理的モデルを構築します.

 主観的な時間知覚と身体的インタラクションの関係
   異種感覚の時間順序判断を用いて時間知覚に対する能動運動や仮現運動からの影響を分析します.

 共創コミュニケーションにおける主観的時間の生成と共有
   協調タッピング課題を用いて主観的時間(「間」)の創出と共有のダイナミクスをモデル化します.

 脳機能イメージングを用いた主観的時間の神経基盤の解明
   「間」の創出メカニズムをfMRIや光トポグラフィーを用いて神経基盤から明らかにします.

 合意形成の対話における情報統合プロセスの分析
   合意形成のコミュニケーションを共創過程と捉え身体的インタラクションと会話の両側面から分析します.

 対話における発話と身振りのタイミング制御モデル
   対話における発話長と交替潜時の相関分析から「間」の共有プロセスのモデル化をめざします.

2.表現的研究: 共創コミュニケーションの支援システム

 共創型ロボットWalk-Mateによるリハビリテーション支援
   歩調を合わせて(間を合わせて)一緒に歩行する共創型の歩行リハビリ支援の研究を進めています.

 遠隔会議システムにおける「間」の共有支援
   「間」を合わせることで遠隔会議システムにおけるコミュニカビリティの改善をめざします.

 ヒューマン・ロボット・インタラクションにおける発話と身振りの「間」
   コミュニケーションロボットWakamaruに発話と身振りのタイミング制御モデルを実装し評価します.

 対話コミュニケーションにおける「間」のクウォリティ
   携帯電話などに発話と身振りのタイミング制御モデルを実装し「間」のクウォリティーを改善します.

 音楽アンサンブルにおける共感空間の創出
   キーボードの自動伴奏システムにおける「間」の共有支援の方法について研究しています.

 事象関連電位ERPを用いた相互適応型ブレイン・マシン・インタフェース
   脳と人工物が相互適応する中でリアルタイムに機能創出するインタフェースの研究を進めています.

3.実践的研究: 共創的コミュニティーのデザインへ向けて

 社会的ネットワークにおける共創的イノベーションの場づくり
   組織における場の可視化に基づいて共創的コミュニティをデザインするための方法論を確立します.

 インクルーシブ・デザインに基づく共創型ロボットWalk-Mateの開発
   医療機関や地域コミュニティの相互乗り入れの「場」においてWalk-Mateの共同開発を推進します.


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